食卓をより楽しく、おいしいものへと変えてくれるワインには、細かいマナーが存在します。
すべてを完璧に守る必要はありませんが、さりげなく取り入れることで、スマートな印象を与えられるでしょう。

また一緒に食事をするゲストも、マナーを熟知している人が一緒であれば、より安心してワインを楽しめます。

この記事ではワインをより優雅に楽しみたい方に向けに、覚えておきたいワインの基本マナーについてご紹介します。

ワインのマナー1. ソムリエにオーダーするときのマナー

 
──丸投げはソムリエ泣かせ。予算だけは伝えておこう──

「ワインの銘柄や種類などは詳しくない」という方は少なくありません。そのためソムリエにオーダーをする際、選定から丸投げになることも多いのではないでしょうか。

予算感のわからないおまかせは、「ソムリエ泣かせ」とされています。
安すぎるワインを選べば、ホストに恥をかかせてしまうかもしれません。高すぎるワインをオススメすれば予算オーバーとなり、やはりホストの面目を潰してしまいます。

ソムリエがスムーズにワイン選びをでき、自身も恥をかかないようにするために、ソムリエにワインをおまかせする際は予算感だけでも伝えておきましょう。

ワインの予算は、コース料理の半額ほどの値段が無難です。ゲストの前で予算を口にするのに抵抗がある場合は、ソムリエにワインリストを用意してもらいましょう。リストに書かれたワインの金額を指さして「このあたりで…」と伝えれば、ソムリエも理解をしてくれます。

 
──料理ごとにワインを変える必要はない──

日本では「料理を変えるごとにワインを変えるのが正しいマナー」と考える方も多くいるようです。

しかし実際は、料理ごとにワインを変えるルールは存在しません。
料理と合わせてワインを選んだほうがよりおいしい、といった理由で料理ごとにワインを変える欧米のスタイルが、マナーとして日本に根付いたのだと考えられます。

そのためワインを変えるタイミングは、お好みで選びましょう。

ワインのマナー2.乾杯のマナー

 
──グラス同士はぶつけない──

ワイングラスは繊細な品が多いとされています。そのためビールジョッキのように乾杯でグラス同士をぶつけると、割れる可能性があり危険です。

加えてグラス同士をぶつけて、ワインがこぼれてしまうことも考えられます。

ワインで乾杯をする際は、グラス同士を合わせずに目線の高さまでグラスを掲げましょう。そのままアイコンタクトだけで静かに乾杯をするのが、ワインのマナーです。

 
──ステム(足)を持つ──

ワイングラスを持つ際は、ステムと呼ばれる足の細い部分を持つことをおすすめします。ステムを持つことでワインに体温が伝わらず、味の変化を防げるためです。

しかし欧米では、ワイングラスのボウル部分を持つことも多いとされています。

どちらが正しいマナーとは言い切れませんが、日本ではステム部分を持ったほうが、見る人にスマートな印象を与えるでしょう。

ワインのマナー3.テイスティングのマナー

 
──スワリングのやりすぎ・回転方向に気をつける──

ワイングラスを軽くゆすってワイン自体を回転させる所作を「スワリング」と呼びます。ワインの香りを楽しむスワリングは、2〜3回転ほどでやめるのがマナーです。回転を加えすぎると、こぼしたり相手の服を汚したりする可能性があります。

また、スワリングの回転方向にも注意しましょう。右利きなら反時計回り、左利きなら時計回りでスワリングをおこないます。

利き手と反対方向に回すことで、万が一こぼれても相手のほうにワインが飛びにくくなり、服や料理を汚してしまうのを防げます。

 
──グラスをなるべく汚さない──

ワイングラスの口部分が汚れていると、相手に不快な思いをさせてしまうかもしれません。
そのため、料理を食べたあとは軽く口を拭いてから、ワインを飲むようにしましょう。

口紅がワイングラスについてしまった際は、親指と人差し指でさっと拭えば大丈夫です。自然で嫌味が無く、上品な所作といえます。

ワインのマナー4.おかわりのマナー

 
──手酌はNG──

ワインをグラスに継ぎ足すのは、ソムリエの仕事です。手酌で注がないようにしましょう。

とくに女性の場合、手酌は相手の男性に恥をかかせてしまう行為にあたります。かならず、相手の男性かソムリエにお願いしましょう。

男性の場合であっても、手酌はソムリエに恥をかかせてしまうことになるため、注意が必要です。

 
──おかわりはソムリエにアイコンタクトを送る──

基本的にソムリエは常に、客席へと目を光らせています。呼ばなくてもおかわりが必要なタイミングでテーブルに来るため、その際にいる・いらないを伝えましょう。

ソムリエが忙しくてテーブルに来られないこともあるかと思います。その際は、近くを通ったソムリエや目が合ったソムリエに、グラスを持ってアイコンタクトを送れば伝わります。

「すみません!」などと大きな声でソムリエを呼ぶのはマナー違反にあたるため、注意しましょう。

 
──グラスには触れない──

おかわりを注いでもらっている間は、グラスに触れないようにしましょう。

どれくらい注がれているか、オリが入っているかなどが、ソムリエ側から見えづらくなるためです。注ぎ終わるまで、手は膝の上に置くか食事を楽しんで待つようにしてください。

 
──おかわりを断る際は指でグラスの口に触れる──

ソムリエにおかわりを断る際、つい手の平でグラスを覆ってしまう方も多いかと思います。しかしグラスを塞いでしまう行為は、ソムリエに対して強い拒絶を表すため、避けたほうが良いでしょう。

おかわりを遠慮する際は、中指と人差し指でグラスの縁に軽く触れるだけでOKです。そして一言「もう結構です、ありがとう」と伝えるのを忘れないようにしましょう。

ワインのマナー5.ワインを注ぐ際のマナー

 
──男性が女性に注ぐ際は無理して片手で注がない──

ワインのおかわりを、男性から女性に注ぐ際は、ボトルの持ち方に注意しましょう。

基本的には、ソムリエのようにワインボトルの底を片手で持って注ぎます。しかし中身がたくさん入ったワインの底部分を片手だけで支えるのは、大変かもしれません。

その際は、もう片方の手をワインボトルに添えて、両手で注いでも大丈夫です。

ボトルのくびれ部分を片手で持って注ぐやり方は、少し荒々しく見えてしまうため、ワインの場では避けたほうが良いでしょう。

 
──女性が複数いる場合は年長の女性のグラスから注ぐ──

女性が複数人いてそれぞれにワインのおかわりを注ぐ場合は、年長の女性から順に注ぐのがマナーとされています。

しかし食事に参加した女性の年齢がわからないシーンもあるかもしれません。その際は、自分に近い位置の人から順に注げば、問題ありません。

 
──ゆっくり静かに注ぐ──

ワインをグラスに注ぐ際は、ゆっくりと、グラスの数センチ上から注ぐようにしましょう。
勢いよく注ぐと、ワインが跳ねてテーブルや服を汚してしまう可能性があります。

また、ワインボトルの中にオリが見られる場合は、グラスに入らないように注意をしてください。

最後は、軽くボトルをひねるようにして持ち上げると、ワインが垂れずきれいな注ぎ終わりになります。もしワインが口からこぼれそうなときは、清潔な布で口部分をさっと拭うようにしましょう。

マナーを知れば、ワインがもっと楽しくなる

ワインのマナーはとても奥が深く覚えることが多くあります。しかし大切なのは、ワインも食事も「楽しむ」という気持ちです。

ワインに関するたくさんのマナーをご紹介しましたが、あまり囚われすぎず、失礼のない範囲で自由に食事の場を楽しんでみてください。

また、ワインの種類に沿って適したグラスを選ぶことで、よりワインの風味や趣を実感できるようになります。下記にワイングラスの正しい選び方について記載しているため、気になる方はぜひ確認をしてみてください。
https://www.maturite.jp/magazine/12012/